十人十色、人の数だけ考え方があります。
部分的には同じ考えってことはあるので、論点によっては相手から同意をさくっと引き出すことはできますが、そうじゃねーよってなることもしばしば。
特に「なぜなんだぜ、、、?」と感じる場面が、こちらは論理的に正しいことを言っているつもりなのに同意してもらえない時です。
でも、それは自分が思っているだけの正しさかもしれませんし、正しさだけで相手の立場への思慮が欠けているかもしれません。
- 議論の切り口、背景や前提条件など相手とこちらの視点が同じなのか
- 論理的に正しいとして相手にデメリットはないのか、メリットはあるのか
状況や立場が変われば正しいと感じることは変わりますし、正しくてもデメリットしかなければ簡単に同意するわけにもいきません。
同意を得る為には、双方にとってメリットがあり、そのことを相手に理解・納得してもらう必要があります。
そんなわけで、デール・カーネギーってすごいよねがテーマです。
- 相手から同意を引き出す為に必要な準備
- 実際に議論の場でやること
こんなことが分かる内容です。
議論で相手から同意を引き出せない理由
一口で言えば、相手は「メリットがない」または「デメリットの方が大きい」内容だと思うからです。
こちらの提案や要求が完全に正当なものだとしても、それだけで同意を引き出すことのできる材料にはなりません。
相手にとって、メリットはなくデメリットしかない内容であれば、こちらの言うことに同意してもらえることはまずないと思います。
そんなことは百も承知で、理路整然と説明考え、かつ相手のメリットもちゃんと入れている人は多いと思います。
でも、ここで一旦考え直します。
なぜなら議論の切り口、対象を抽象化するか具体化するか、など条件によって意見の正しさが変わってくるからです。
つまり、こちらの視点では双方にメリットがある最適解だと思えても、相手の視点が違えば別の意見や方法が正しいと考えているかもしれないということです。
ある営業マンが「購入量に応じたセールを行います」と営業をかけました。
取引先の方針は「必要以上の支出を抑えて会社の体力を確保」するというものでした。
購入量は取引先の販売計画以上で過剰在庫となってしまう為、取引先の方針と合いませんでした。
上記の例では、営業マンは販売価格を下げるというメリットを取引先に提示しています。
しかし、取引先にとっては、営業マンの提示するメリットよりも大きなデメリットが発生することになるので、営業マンが同意を引き出せる可能性は低いのではないかと思います。
こちらは双方にとってメリットある提案を論理的に説明できたと思っていても、相手の立場や状況によってはメリットと感じてもらえない。
これが議論で上手く同意を引き出すことができない大きな理由です。
議論で相手の同意を引き出す為に準備すること
何も準備することなく同意を引き出せる時は、双方のメリットが無条件で一致しているか、相手にとって毒にも薬にもならない「どーでもいい」ことくらいなもんです。
議論になるということは、少なからず双方の意見をすり合わせる必要があるということです。
そして、同意を引き出す為には兎にも角にも相手にもメリットのある意見や提案でなければなりません。
その為に、事前に状況の把握やゴールの設定、提案方法などを準備、イメージしておくことが大事です。
準備しておくとお得なことは次の5つです。
- 相手の情報の把握
- こちらにとってのゴールを複数考える
- 所謂Win-Winになりそうなゴールを見つける
- ストーリーを考える
- 言語化することは忘れずに
相手の情報の把握
先述の通り、相手には相手の視点や議論の切り口があります。
議論する上で相手が前提とすること、メリットだと思うことを知る手がかりとして相手の情報を把握することは大切です。
先ほどの例で言えば、取引先は「必要以上の支出を抑えて会社の体力を確保」という方針を持っていました。
この情報があれば、取引先の販売計画以上の購入量を求めるような提案は反応が薄いということは事前に予測がつき、あらかじめ別の提案内容を準備することができたと思います。
こんな感じで、相手の情報があるとないとでは相手との議論の推進力に結構な差がでてきます。
議論とは双方の主張のすり合わせであるとするのなら、相手の情報を全く調べずにこちらの主張だけを軸とした話を展開したところで、実りのある議論にはならず同意を引き出すこともできないのかなと思います。
こちらにとってのゴールを複数考える
ざっくり言えば、ベストなゴール、ベターなゴール、最低限のゴールです。
事前に集めた情報を基に提案内容を考えていたとしても、結局こちらが想像する相手にとってのメリットです。
こちらのベストなゴールに対する同意を得られるかどうかは分かりません。
また、実際に議論を交わす中で新情報が浮かび上がったり、双方の心情や状況が変化したりします。
ということで、ベストなゴールの中身を分解・分類します。
最低限達成したいもの、追加できれば尚良しなもの、これらを組み合わせていくつかのゴールを設定しておきます。
先ほどの例で言えば、「購入量に応じたセール」というゴールだけでなく「持続的な購入期間に応じたセール」というゴールも準備しておくと同意を引き出せる可能性が上がるかもしれません。
営業マンとしては購入量を上げたいが故のセールだったわけですが、取引先の思惑からは外れてしまい同意を得るに至りません。
「即効性のある売上増」から「持続的な売上の安定」という別なゴールも準備することで、取引先の「必要以上の支出を抑える」という考えに沿った提案ができ同意を引き出せるかもしれません。
議論で同意を得る為には一方的な話では難しいです。
相手の状況に合わせていくつかの妥協案を準備すると同意を引き出すことに一役買ってくれます。
所謂Win-Winになりそうなゴールを見つける
しつこいですが、相手にとってメリットがなければ同意を得ることは難しいです。
かといって、相手のメリットだけ考えて、こちらは何もメリットがなければ議論する意味がなくなってしまいます。
複数のゴールを準備する時に、所謂Win-Winになりそうなゴールを見つけるようにしたいです。
あらかじめ集めた相手の情報を駆使して相手の視点に立った考え方とメリット、こちらの考え方とメリットが重なる場所はどこかを探します。
先ほどの例で言えば、取引先の「必要以上の支出を抑える」という考えと、営業マンの「売上を作る」という考えが噛み合うポイントとして「持続的な購入期間に応じたセール」という着地点を考えました。
購入量は取引先の販売計画に基づきますが、代わりに一定期間は優先的に購入をしてもらいます。
取引先にとっては必要以上の出費なく原価を下げられます。
営業マンにとっては先々の確実な売上と期間中は競合他社から横槍が入ってもそれ以上の値下げを行わなくていいというメリットがあります。
議論の中から双方メリットのあるゴールであれば、同意が得られたり、お互いに議論を重ねて良かったと思えたりする可能性が高まります。
ストーリーを作る
話のネタを色々と仕込んでも、順序立てた説明でなければ相手に理解してもらえません。
感情を動かすような話でないと相手が同意する後押しになりません。
話の構成や実例などを交えて相手に理解と納得をしてもらえるようにします。
先ほどの例で言えば、「購入期間に応じたセール」に同意してもらうことで取引先にとって計画通りの購入量でありながら原価を下げることができるメリットをしっかりと伝えます。
そして、なぜこちらはこの提案をするのか、継続的な購入の要求も伝えて。両者にメリットのある提案を作ってきたと取引先の感情にも訴えます。
同じことを伝えているつもりでも話し方一つで相手の受け取り方は変わります。
人間には感情があり、判断材料に感情が影響することは多々あります。
内容ももちろん大事ですが、話し方や展開も大事にするといいことあるかもしれません。
PREP法、SDS法、DESC法など、話の組み立て方のフレームワークは色々とあるので状況に合わせてストーリーを作ってみてはどうでしょうか。
関連記事:売れない原因は営業にあるか?売れる物は組織全体で作るもの
言語化することは忘れずに
上記4つのポイントを実行する際に忘れずに行いたいことが、言語化して誰にでも説明できるようにすることです。
実際に言葉にしたり、口に出したりしてみないと、いざ相手に提案するとなってもイメージ通りに上手く説明できないってことはよくあります。
また、言語化することで自分自身の理解度も深まります。
関連記事:言語化の力と鍛え方。この想い伝われ!!って時にめっちゃ使える。
議論の場で相手の同意を引き出す為にやること
準備万端で議論に臨んでもイメージ通りに事が運ぶとは限りません。
臨機応変に対応する為にも次の4つのことを意識すると良いかもしれません。
- 相手の話を聞く
- 相手の言葉を使う
- 議論を勝ち負けで考えない
- 感情的にならない
相手の話を聞く
議論だけでなくコミュニケーション全般で言えることですが、傾聴する姿勢はかなり大事なことです。
第一に人の話を聞かない奴の話を誰が聞いてくれるのかという根本的な問題があります。
そして、知らなかった新情報を知ることができますし、議論を重ねたことで変化したリアルな今の相手の考えを知る上でも大切です。
相手の言葉や反応に注意を払う事で、前向きなのか、はたまた提案内容を変えた方がいいのかなど察知できることはたくさんあります。
そもそも、同意を引き出す、得ることとは最終的には相手の考えを聞く事にほかならないので、相手の話を聞く姿勢を心がけます。
相手の言葉や言い回しを使う
相手と主張が違ったとしても、共感や部分的に同じポイントはあると思います。
相手の言葉や言い回しを使って「〜さんが仰ったように、、、」と相手の考えと一致している部分があることをはっきりと伝えます。
- 相手の名前を言うことで感情に働きかける
- 相手の話を聞いていることを伝える
- 方向性が合っている部分はあることを伝える
などの効果が多少は期待できるので、相手にもっと話に集中してもらいやすくなります。
どの点が一致、相違があるのかを明確化することで議論すべきポイントが見えやすくなることもあります。
議論を勝ち負けで考えない
議論とは双方意見を出し合い、双方にとってより良い方向に進む為に行うものだと思います。
そして、今回のテーマで言えば相手から同意を引き出すことが目的です。
少なくとも、こちらの意見が正しいということを証明するような場ではないです。
しかし、議論を勝ち負けで考えていると、双方の意見がぶつかり合う場面が出てきた時に、本来の目的を忘れて自分の考えの正しさを主張しがちになります。
よしんば相手を言い負かせたとしても、本来の目的である相手の同意を得ることは難しいと思います。
もはや相手にとって議論がどうとかではなく、こちらとのコミュニケーションがただただめんどくせー、、、と感じているだけなんじゃないかと思います。
どちらの主張が勝ったか負けたかではなく、本来の同意を引き出すという目的を意識しましょう。
というか、勝ち負けばかり考えていると議論そのものが上手くできないと思います。
感情的にならない
議論を勝ち負けで考えないところと通ずるものがありますが、議論の場で感情的になってはマイナスでしかないです。
しかし、議論が白熱してくると段々と興奮してきて冷静さを失ってしまうことがあります。
冷静さを失えば適切な判断が下せなくなります。
また、感情的な話し方は、相手がこちらに対して敵対的な感情を持つ原因になりますし、こちらも準備していた提案したいこと、伝えたいことを上手く話せなくなります。
っていうか感情的になって良いことある場面ってなくない?って思います。
関連記事:感情のまま怒ることの無意味さ 1年前のことって覚えてなくね?
相手から同意を引き出せてからが本番
相手に同意してもらったら全部終わったーとなるのは時期尚早です。
同意を得た事柄をしっかりこなす、同意をしてくれた相手への感謝や立場に配慮するなど同意を得てからが本番です。
相手が同意することは相手の責任で判断したことではありますが、こちらの話を信頼してくれたという意味でもあります。
やるべきことをしっかりやることで今後の信頼にも繋がり、新たな議論で同意を引き出せる可能性を高めてくれることにもなります。
関連記事:淘汰され消える営業。適応し生き残る営業。
まとめ
相手から同意を引き出す為に一番大事なことは、双方のメリットを考えることです。
どちらか一方にしかメリットがない話が同意や合意に辿り着くことは非常に稀、というかないんじゃないかと思います。
事前準備の時や議論の場で、自分のことだけでなく相手の立場や考え、感情にも寄り添った考え方ができれば、同意を得られる可能性はぐっと高まります。
日常生活でも仕事でも、意識して過ごすと良いことあるかもしれません。
以上、最後までありがとうございます。