「お代官様、これを、、、」「お主も悪よのう」的なイメージ持たれがちな根回し。
こんな印象を持たれている様子をしばしば見ることがあります。見る角度によっては、そうかもなぁと理解できるところではあります。
他にもこんな印象があるかもしれません。
- 根回しはくだらない
- 議論の前に決めてしまうのはルール違反
- 根回しは効率が悪い
そんな何かと印象の悪い根回しですが、仕組みと意味を理解するとかなり使える手段です。
特に、新しいことを提案しようなんて時には前例がないのでなかなか周囲の理解や協力を得られないことがあります。こんな時こそ根回しの効果が絶大だったりします。
ということで、今回のテーマは根回しのイメチェンです。
最初にまとめるとこんな感じです。
- 全体の利益を求める
- 新しい事 = 変化は人が苦手なことの一つ
- 上下左右の協力が必要なことを忘れない
- 相手の感情に配慮する
根回しとは
根回しとは事前に相互理解を深めることです。
事前に同意を得ることや自分に有利に準備することではなく、関係各所との情報交換や意図をお互いに理解しておくことを目的とします。
事前の相互理解がしっかりしていることで、本番である議論では話の軸がブレることなく適切に行うことができます。
何かを提案する時にボツになることを目指しているわけではないので賛成多数で決まることが第一の目的ではあります。
でも、適切な議論によってより良い提案になるかもしれませんし、全く新しい案が見つかるかもしれません。
はたまた自分が気付いていなかった欠点があってボツにした方がいいことに気付くかもしれません。
賛成を勝ち取る為の根回しではなく、より良い案を本気で模索する為の手段の一つが根回しです。
自分の利益だけを追求したり、絶対に自分が正しいというスタンスだったりすると、冒頭の悪代官になってしまいます。世間一般がイメージするThe 根回しはこっちの方かもしれませんね。
根回しはくだらない?
根回しはくだらなくないです。むしろ必要だと思います。
根回しがくだらない、不要であると考える人もいますが、根回しの本質を誤解しているか、本当に根回しが不要な優秀な人で構成されている組織かのどちらかなのかなと思います。
根回しを誤解しているかもしれないケースでは、自分が有利になる為に、裏でコソコソしていたり、事前に同意を取り付けたりと、卑怯とか汚いという認識なのかもしれません。
卑怯な手段として根回しを行なっている人がいることは否定できないですが、組織を活性化させたり、成長させたりすることができる根回しもあります。
使う人によってはポジティブにもネガティブにもなってしまうことは何にでも言えることです。根回しそのものに対して否定的にならなくてもいいのではないかなと思います。
超優秀な人たちで構成された組織なら根回しが要らないかもしれません。
情報の共有や状況の把握が正確で、かつ多角的な見方を持てる人たちだけの集団であれば事前に相互理解を促しておく必要がないからです。
- 思い込みや認識のズレ
- 議論が噛み合わない結果、感情的になる
- 決めることが決まっていない
これらは無意味な会議の原因となりえるもので、根回しが解決できるものです。
無意味な会議の原因の心配がない組織であれば、根回しは必要ないと言われてもそりゃそうかとなります。
とはいえ、世の中そんな組織だけということでもないので、私個人は根回しって大事だよと思っているわけです。
関連記事:【根回しはくだらない】日本だけの文化なのか。否、海外もあるんだぜ
根回しが必要な理由
根回しが必要な理由を深掘りしていきます。案外根回しにはメリットが結構あったりします。
事前に相互理解を促せる
一度の説明で全てを理解できる人は少ないです。
こちらのプレゼン内容がお粗末だと言われればそれまでですが、双方が理解する為には相手の理解力にも大きく影響を受けます。
私の独断と偏見かもしれませんが、一撃のプレゼンで全ての参加者が理解できるとすると参加者全員は相当優秀な人たちばかりなんだと思います。
一度の説明で双方スッキリして終われることなんて皆無とすら考えておいて、事前にジャブを打って一定の理解を促しておく方がスムーズな討論に繋がります。
理解が深まっていない会議は論点がズレた質問や応答の連続でお互いが消耗していくだけです。最悪、本質が理解されないまま廃案になってしまいます。
こちらの説明が拙いという可能性、相手が一度では理解できない可能性を考慮しつつ本番前から要点をかいつまんだ情報共有は大事だと思います。
関連記事:「仕事がうまくいかない」のは皆が通る道。時間が解決してくれる。
改善点が見える
事前に相談すると、こちらが見落としていたものが見つかることがあります。
自分の中では前提条件と思っていることが周囲からすると前提でも何でもなかったり、内容は同じでも表現を変えることで違う意味に聞こえてしまったり、相手の反応から改善点を見つけることができます。
それとオフィシャルな場とは違い思いつきの発言が出てきやすいことも良い点です。
そんなバナナと思える意見の中に、実は光り輝くものが混じっていることはよくある話です。
自分では見落としていたことの発見、公式な場よりも柔軟な意見が出やすいこと、根回しだからこそ改善点が見つかりやすいかもしれません。
強烈なインパクトには人は身構える
根回し、つまり事前の準備が必要な案件というのは大体が新しいことなわけで、良くも悪くもインパクトが強いものです。
ポジティブ、ネガティブに関わらず強烈な印象をもたらす出来事には人は身構えてしまいます。身構えた状態だと心身ともに固くなります。つまり思考の柔軟性が失われてしまいます。
冷静な状態であればしっかりと話を聞いてくれる人も身構えた状態だと聞く耳を持ってくれないかもしれません。
本番でいきなりドーンとぶち上げてしまうと合理的に考えるよりも先に感情に火が着いてしまうかもしれません。
根回しによって、事前に情報を共有しておくことで固まってしまった思考をほぐしておくことができます。
人間には感情がある
人間には感情があります。
合理的な話も大事ですが機械を相手にするわけではなく、一人一人感情を持った人たちと議論をすることを忘れてはいけません。
ネガティブな印象を持つ人の意見をニュートラルに聞けるほど立派な人はそうはいません。
合理的な議論を求めていても誰しも感情に思考を歪められてしまうことはあります。
合理的に正しいという理由だけで感情を一切無視した提案というのは、人が判断する限り良い結果には結びつかないと思います。
合理的な議論をする為に根回しをして少しでもニュートラルに聞いてもらう準備をします。
もちろんニュートラルに聞いてもらうこと、合理的な議論をすることが目的なので相手に迎合するわけではありません。
議論の参加者の意見をちゃんと聞く姿勢を持っていると態度で示すだけで十分です。
事前に相談することは相手にとっては頼りにされている、意見を求めてくれていると感じることなので悪い気はしないものです。
それと、こちらに対する反論が合理的だとしても相手が感情的な物言いだと、こちらの受け止め方も変わってきます。どっちにしても損じゃね?と思います。
同意してもらう為ではなく、合理的な議論や的確なアドバイスを引き出す為と考えると根回しへの印象は少しは変わってきませんか?
関連記事:感情のまま怒ることの無意味さ 1年前のことって覚えてなくね?
無意味な会議の方がトータルで損失
論点がズレまくり、結論が出ない、何の為の会議だったっけ、、、という時の損失は結構大きいです。
参加者分の時間的、人的なコストが垂れ流しになります。しかも特別計算するわけでもないので、その無駄さに気付いていない場合すらあります。
根回しを関係者に行うことは時間の無駄と思われがちですが、会議の準備に要する時間や人、会議に参加する人の時間などトータル掛かったコストを考えると無意味な会議で終わらせてしまった方が無駄です。
根回しを使って、事前に相互理解を深めることで有意義な会議にした方がトータルでは得なんじゃないかと思います。
根回しのやり方
根回し = 事前の相互理解なわけで、事前に理解し合っておきたい人を対象に行うのが基本です。
事前に提案内容を詳細に説明するというより、もっと根本的な部分を相互に理解できるようにします。
例えば、最終的なゴールはどこか、どのポイントを重視して案件を見極めているのか、従来の方向性とは真逆の視点についてとか、大きな枠での理解を深めておきます。
目的はあくまで全体の利益です。実りある活発な議論の為に根回しを行います。
変化への対処
大きな議論が必要な時とは、新しい試みや案件があるなど何かしら変化が生まれる時です。
そして、変化は人が苦手とすることの一つです。客観的に見て良いと思えることでも、変化の影響を受ける人は否定的な反応を示しがちです。
変化の影響を受ける人からすると、変化に対応するには目先ではコストが発生します。
未来のメリットを享受するよりも先にコストが発生しますし、未来のメリットをきちんと理解していないとコストを押し付けられた感覚になりやすいです。
変化で得られるメリット、変化のどこに拒絶感があるのかを共有しておくことで、提案内容のヒントになります。
相手の立場を考える
根回しの失敗にありがちなパターンが提案の同意を得ることだけに集中してしまい、相手の立場を考えないことです。
先ほども触れましたが人には感情があります。合理的だから、正しいから、だけでは人の感情は動かない場合があります。
例えば、決済者を飛び越えてさらに上の役職にアプローチを掛けるとか、こちらが正論だからと参加者の意見に耳を傾けないとか、相手への配慮が欠けた根回しではやる意味がないです。
また、いざ提案が通り実行するとなった時にも、会議の参加者に協力を求める場面は多いはずです。
最終的なゴールはどこにあるのかを自分自身も理解して、最後まで同意や協力を得られるような意識を持ちます。
上下左右、周囲の協力が必要なことは忘れない
提案に対する同意、会議での承認などに意識が向きすぎると忘れてしまう時がありますが、最終的なゴールは違います。
実行、運用することで何らかの利益を生み出すことが目的なはずです。
実際に作業にあたるのは、現場だったり部下だったり他部署の人の場合もあります。
根回しと聞くと上の立場の人に対するものと思われがちですが、最終的なゴールを意識して道中の協力が欠かせない人たちへ行うものです。
変化への対処のところでも書きましたが、変化は人の苦手なことです。そして、新しいことを実行するのは現場の人ということもあります。
事前に現場の人など関係者との相互理解を怠ってしまい、万全の協力を得られないことで想定していた結果が出なかったとすれば非常にもったいないことです。
上下左右、周囲の連携があって組織は成り立っていることを意識した根回しを行います。
根回しというか普段から周囲を見る
根回しの一番のコツは普段から周囲の人の考えや特徴を掴んでおくことです。
仲良くなる必要はないです。どういう考え方をしているのか、得意な作業は何か、どんな伝え方だと理解しやすいのか、普段の仕事ぶりから察知できることは案外あります。
行動を起こそうという時だけ相互に理解しようとしてもヒントが少なすぎますし、少なくとも、こちらが普段から相手を理解するように努めておけば根回しの労力も少なくできます。
感情への配慮も普段の積み重ねに勝るものはありません。余計な負の感情に阻まれることなく効率的な議論を交わしやすくなります。
根回しに限らず組織で動くということは、たくさんの相互理解で成り立っているものです。
まとめ
- 全体の利益を求める
- 新しい事 = 変化は人が苦手なことの一つ
- 上下左右の協力が必要なことを忘れない
- 相手の感情に配慮する
根回しはネガティブな印象を持たれがちですが、相互理解や周囲の感情に寄り添う為の手段の一つです。
何か変化がもたらされると受け入れることは楽ではないです。
自分にとって利益になることを理解しないうちから全てを受け入れろというのは無理な話です。
でも、根回しによって「そういうことならやってみるか」と一緒に前向きになってくれる仲間が一人でも増えれば、新しいことへ挑戦する姿勢が組織の中で少しずつ育まれると思います。
少しでも根回しに対して前向きになってみると良いことがあるかもしれません。
以上、最後までありがとうございます。