eSIMの登場で海外出張向け通信サービスの選択肢が増えました。
しかも、手軽さ重視という新しい選び方付きで。
以前は、現地SIMか海外向けWi-Fiレンタルかの2択が主でしたが、手続きや荷物増など手軽さという点では物足りなさがありました。
対して、eSIMには次のメリットがあり、一言で表せば手軽さが特徴です。
- 出国前に通信環境を整えられる
- 購入・設定がオンラインで完結
- 付随する機器が不要(省荷物化)
- 通信料金のプランが選べる
これらのメリットを考えると、単独の短期海外出張にはeSIMは有効なんじゃないかと個人的には考えています。
ただ、eSIMサービスの数が多く、どれを選べばいいかに迷ってしまうところが玉に瑕。
ということで、今回はお手軽eSIMサービスってなんかない?です。
とりあえずeSIMサービスの比較が見たい、という人は海外出張用におすすめのeSIMサービスの比較一覧をご覧ください。
海外出張の準備から滞在中まで、押さえておきたいポイントを下記にまとめています。海外出張が不慣れだという人のお役に立てれば幸いです。
eSIMって何ぞや?
eSIM(embedded SIM)とは、埋め込まれたSIM、つまりデバイス内蔵型SIMのことです。
そもそもSIMとは、Subscriber Identity Moduleの略で、携帯電話加入者を特定する為の情報が記憶されている記憶媒体で、この情報を基に通信を行える様になります。
通常のSIM(物理SIM)は、SIMカード一つにつき、一つの加入者情報を記憶しており、別の通信サービスに切り替える際はSIMカードの差し替えを行う手間が発生します。
対して、eSIMは複数の情報を保持できる記憶媒体をデバイスに内蔵させたものです。
したがって、あらかじめ複数の情報をダウンロードしておけば、デバイス上で簡単な操作を行うだけで、通信サービスの切り替えが可能です。
サービスの数だけSIMを管理する手間、SIM紛失のリスクがないので、次々と居場所の変わる海外出張にはうってつけの手軽さがあります。
ただし、複数サービスを同時に保持する特性上、eSIMはSIMフリーのデバイスでしか使えません。
あらかじめSIMロック解除かSIMフリーのデバイスの用意が必要です。
海外出張向けeSIMの使い方
基本的な使い方はどのサービスでも同じです。
- 契約者の基本情報を登録する
- 希望する通信プランを購入する
- プロファイルと呼ばれる加入者情報をダウンロードする(アクティベートと表現されることも)
- 通信回線を購入したサービスに切り替える
エラーが発生しても、ダウンロード済みの加入者情報(プロファイル)を削除しないでください。
多くのサービスで、ダウンロードの権利は一回に設定されています。
サービス提供会社への問い合わせなく、削除した場合は新規購入となることがあります。
エラー発生時は、まずは問い合わせ窓口に連絡をしましょう。
契約者の基本情報登録までは無料のサービスが多いです。
登録無料のサービスで料金が発生するのは、通信プランを購入した時です。
実際に通信サービスを利用する時以外はお金が掛かりません。
各サービスで、アプリの有無、見た目などに若干の違いはありますが、根本的なシステムは同じです。
trifaというサービスが日本語の説明動画を提供しているので、そちらを参照すると使い方が分かりやすいかもしれません。
○eSIM対応機種
eSIM対応機種の一例は下記のとおりです。
なお、先述のとおり対応機種であってもSIMフリーになっていることが条件です。
- iPhone XR以降
- Pixel 4以降
- Xperia 1IV / V
- Galaxy S23 / S23 Ultra
「*#06#」と入力し発信後に、“EID番号”が表示されればeSIM対応機種です。
ちなみに、iPhone 13以降、Pixel 7 / 7 Pro以降は、eSIM同士によるDual SIMに対応しています。
eSIMが特に有効な海外出張
- 一人海外出張、または単独行動が多い
- 複数の国へ渡航する
- 外出先で頻繁にテザリングを行わない
- 都度の手続きや返却が煩わしい
- 出張先の国は様々
eSIMの特徴として、先述のとおり手軽さが挙げられます。
一度気に入ったサービスが見つかれば、スマホ上で通信プランの購入・設定が完了できますし、付随する機器の持ち運び、機器の返却がありません。
- 出国前に通信環境を整えられる
- 購入・設定がオンラインで完結
- 付随する機器が不要(省荷物化)
- 通信料金のプランが選べる
一方で、次のデメリットがあります。
- SIMフリーのeSIM対応機種が必要
- テザリングによる電池持ちの悪さ
- 複数人の共有は通信安定性に欠ける
- 通信プランには有効期限がある
したがって、複数人・機器での共有が多い、長期出張、外出先で頻繁にパソコンと繋ぐ、といった出張には不向きです。
上記条件のような出張の場合は、海外Wi-Fiレンタル、現地SIMなどの方が強いです。
海外出張向けeSIMの選び方
海外出張用として考えるなら、次のポイントをチェックしましょう。
- 出張先に対応している
- テザリング対応している
- 価格
- サポート
○出張先に対応している
通信サービスにおいて対応国数を気にしがちですが、気にしなくても構いません。
eSIMのメリットは同時に複数サービスを利用できることです。
対応している別のサービスを使えばいいだけなので、目的地に対応したサービスかだけチェックしていればいいかなと。
○テザリング対応している
パソコンやタブレットを外出先で使用する場合は、テザリング対応しているか確認しましょう。
ちなみに、頻繁に外出先で使うのであれば、海外Wi-Fiレンタルの方が向いています。
スマホの電池消費が激しくモバイルバッテリーが必要になります。
○価格
サービスごとに強い地域が分かれています。会社の本拠地の影響があるのかもしれません。
eSIM の強みを活かして、強い地域ごとにサービスを使い分けるのも選択肢の一つです。
長期出張・滞在であれば現地SIMが向いています。一般的に最安プランは現地SIMであることが多いので。
○サポート
海外出張だと日中だけでなく早朝や夜の活動も多いです。
サポートの迅速さ+問い合わせ受付時間をチェックしましょう。
チャットなどで24時間365日対応のサービスがあります。
海外出張用におすすめのeSIMサービスの比較一覧
おすすめeSIMその1 “airalo”
サービス名 | airalo |
ロゴ (クリックで公式サイト) | |
運営会社 | AirGSM Pte. Ltd. (シンガポール) |
通信 | データ通信 一部通話あり |
アプリ対応 | ○ |
テザリング | ○ |
対応国数 | 200以上 |
日本語対応 | ○ |
得意地域 | 万能型 |
価格 |
airaloは世界的に有名なeSIMサービスです。
対応国の数、地域を問わない低価格帯、手続のシンプルさなど万能なサービスを提供しているので知名度の高さにも納得です。
海外発のサービスに抵抗がなければ、まずeSIMを使ってみたいという人は、これ一つでほとんどの出張先に対応できます。
○使い切ってもアプリ接続可能
airaloのeSIMを使用中であれば、データ容量・有効期限が切れてもairaloアプリに接続可能です。
外出先でうっかり使いすぎても、すぐに追加や新規購入が可能なので安心感があります。
関連記事:airaloをインドネシアで使ってみた【海外出張にはeSIMがおすすめ】
○サポート
メール・チャットによる24時間サポートで日本語にも対応しています。
ただし、翻訳を通した様な表現なので、英語でのやり取りの方が正確に伝わるかもしれません。
アプリやWebサイトは日本語対応です。
○注意点
プランごとの有効期限が短めなので、容量の大きなプランを選ぶ際は使い切る前に有効期限切れになるかもしれません。
計画的な購入が必要です。
おすすめeSIMその2 “World eSIM”
World eSIM は日本企業が提供するeSIMサービスで、世界的にみても対応国の豊富さが特徴です。
日本語によるサポートが万全なので、海外発のサービスに抵抗感がある人にはおすすめなeSIMです。
○欧州・北米に強い
対応国が180以上の中でも、特に欧州・北米の価格帯に強みを持っています。
1日単位からの利用が可能なので、柔軟に出張計画に合わせた運用ができることもポイントです。
○サポート
運営会社の(株)ビジョンは、1,900万人の利用実績(2024年1月ビジョン調べ)がある“GLOBAL WiFi”というWi-Fiレンタルも運営しています。
海外通信の豊富な経験によるサポート力があります。
○注意点
地域によっては選べるプランが限定的で、出張計画とマッチしないかもしれません。
出張先のプランをよく調べましょう。
おすすめeSIMその3 “Ubigi”
Ubigiは運営会社がフランスの欧州・北米に強いeSIMサービスで、親会社はなんと日本のNTTです。
有効期限1年のプラン、プロファイルの再インストールが可能、といった特徴があり、長期出張・定期的な同一地域への出張には有難いサービスです。
○利用者目線のサービスが多いeSIM
同一機器か異なる機器かに関わらず5回まで再インストール可能な数少ないeSIMサービスです。
他にも、UbigiのeSIMを使用していれば、容量や期限が切れてもUbigiアプリ経由で、追加や新規購入が可能な点もユーザーを大事にしている印象があります。
○サポート
日本語での問い合わせが24時間可能です。
Webサイトの問合せフォームは大まかな要件をプルダウンから選択する方式で、翻訳精度を高める為だと思われます。
アプリとWebサイトは日本語に対応しています。
○注意点
意図的なものと思われますが、地域ごとの価格差が大きいサービスです。
出張先が得意地域以外の場合は、価格を比較しましょう。
おすすめeSIMその4 “eSIM-san”
eSIM-sanは日本企業が運営する単位容量あたりのコスパに優れたeSIMサービスです。
東アジア・欧州が得意地域で出張期間が1週間程度、それなりに通信容量を使う場合には比較的お得なサービスを得られます。
○単位容量あたりのコスパがいい
ほとんどのプランは、“〜GB/日、使用日数〜日”となっており、1日あたりの使用量に限度はあるものの、総容量は大きい部類のサービスです。
ペース配分が分からず最初の数日で容量を使い果たすといった心配もいりません。
○サポート
日本語でのメール対応です。
今のところサポート受付時間がはっきりとはしておらず、日本と時差の大きい国が出張先の場合は、少し時間がかかるかもしれません。
○注意点
今回紹介するサービスの中では、比較的対応国が少なめです。
事前に出張先に対応しているか確認しましょう。
関連記事:eSIM-sanをインドネシア出張時に使ってみた感想
おすすめeSIMその5 “kkday”
kkday はeSIMだけなでなく、宿泊施設・交通機関・アクティビティなど、海外旅行に関する総合的なサービスを展開しています。
出張というよりは旅行向きなサービスかもしれません。
○無制限プランが豊富
無制限プラン(一定量消費で低速)が豊富な上に有効期限を1日単位から選べます。
短期出張でも有効期限を無駄にすることなく無制限プランが使えます。
○サポート
kkdayアプリを介してメールでの問い合わせが可能です。
サポート・アプリ・Webサイトが日本語に対応しています。
○注意点
海外旅行全般を網羅したサービスで、通信環境特化型ではありません。
その為、対応国は比較的少なめなので、出張先に対応しているか確認が必要です。
おすすめeSIMその6 “trifa”
trifaは日本発の隙のないeSIMサービスです。
どれを取っても平均以上の優等生で、とりあえずeSIMをと考える時は候補の一つになると思います。
○オプション追加でキャンセル可能
eSIMの性質上、購入後のキャンセル不可のサービスが多いですが、オプション追加で未使用時であればキャンセル可能です。
海外出張では急な予定変更は割とある話なので、出張向きのサービスといえます。
○サポート
日本語チャットによるサポートです。
対応が早く、大体の問題はすぐに解決できます。
○注意点
良くも悪くも平均的なので、コスパを求める人には物足りないかもしれません。
複数サービスが面倒な人向けのサービスです。
おすすめeSIMその7 “Holafly”
Holaflyはスペイン発のeSIMサービスで、海外向けeSIMには珍しく音声通話プラン(欧州のみ)があります。
さらに特筆すべきは、基本が無制限プランということ。容量をどうするか悩む必要なしです。
○基本プランが無制限&返金あり
基本プランが無制限&返金ありというeSIMサービスの中でも突出した特徴があります。
特に返金処理については、購入後にeSIM非対応に気付くという利用者の過失に対しても行います。
○サポート
日本語でのチャット、メールの問合せが可能です。
WebサイトはFAQなど一部が英語ですが、購入ページ・チャットによる直接の問合せはしっかり日本語で対応してくれます。
アプリは日本語非対応です。
○注意点
ほとんどのプランでテザリングが使えません。
PCを使う場合はeSIM内蔵のものが必要です。
eSIMデータ容量の目安
何GBを買えばいいんだ?と迷う場合は以下の目安をご参考にしてください。もちろん、ただの目安なので悪しからず。
メール | テキストのみ:約10万通 添付ファイルあり:約2,000通 |
ZOOM | カメラなし:20時間 カメラあり:約1時間 |
ネットブラウジング | 約3,000ページ |
Google Maps | 約200時間 |
LINE | 音声通話:約50時間 ビデオ通話:約3時間 |
1-2時間 (コンテンツの内容による) | |
X (Twitter) | 約3時間 (コンテンツの内容による) |
音楽ストリーミング | 約10時間 |
Youtube | 480p:約1時間 |
ZOOMなどのビデオ通話は同時に接続する人数や画質によって変動しやすく、ネットブラウジングやSNSなどはコンテンツの内容や画質によって変動しやすいのでご注意ください。
海外用買い切り型eSIMの注意点
何事も完璧なんてことはなく注意すべき点は存在するわけで、もれなくeSIMにもあります。デメリットも把握した上で活用するかどうかの判断は大切ですね。
キャンセル不可
基本的にeSIM購入後のキャンセルや返金は不可とされています。(Holaflyは基本プランにも返金対応あり)
オプションとしてキャンセル可能な機能を別途料金と共に付与しているサービスもありますが、通常プランではキャンセルができません。
一方で、買い切り型なので解約手続きが不要、新たにこ運輸しない限り追加の料金は発生しません。
基本的にダウンロードは一回だけ
eSIMサービスの多くは、ダウンロード(アクティベート)が1回限りです。(Ubigiは5回までの猶予あり)
一部のサービスでは、未使用のeSIMに限り、ダウンロード用のコードを再発行できますが、別途手数料が必要です。
一度ダウンロードしたeSIMで不具合が出た場合は、eSIMを削除して再ダウンロードしようとせず、必ずカスタマーサポートへ連絡するようにしましょう。
基本的に、いかなる原因であっても再発行や返金などの対応は取ってもらえないと思っていた方がいいです。
価格の安さというメリットはありますが、再発行や返金のサービスはないというデメリットがあります。
eSIM対応デバイスが必要
eSIMが使えるデバイスがなければ使えません。また、スマホやタブレットはSIMフリーでなければいけません。
eSIMデバイスの用意やSIMロック解除の必要がある場合があります。
データ容量とは別に有効期限がある
データ容量に目が行きがちですが、買い切り型のeSIMには有効期限も存在します。
有効期限が切れてしまうと、データ容量が残っていたとしても使えなくなります。
特にデータ容量の大きいプランを選択する際は、有効期限をよく確認しましょう。
なんだかんだサポートは完璧ではない
キャンセル不可やインストール回数に上限があるなどもそうですが、安くて便利なサービスゆえに、シビアに削るところは削られています。
24時間365日対応のサポートと言っても、すぐに返信が来ない場合もありますし、対応するスタッフの質も均一性が確保されているわけではありません。
手っ取り早い解決策は、新規購入なんてこともあります。
もちろん、トラブルが起きないことの方が圧倒的に多いので、価格や手軽さとのトレードオフと割り切る心構えが大切です。
通信状況は滞在先に依存する
eSIMに限った話ではありませんが、現地の回線は現地の通信会社のものを利用しています。
国による違いもありますし、現地の通信会社による違いもあります。
eSIMサービスでは、どうにもならないこともあるというのは理解しておきます。
eSIM以外にも使える通信手段はある
冒頭にも書きましたが、海外出張でコスパが良い従来の通信手段は主に2つでした。
さらに最近だとahamoのように海外でも追加費用なしで使える日本のキャリアサービスも登場しています。
それぞれのサービスに、eSIMには無いメリットもあれば、デメリットがあります。
eSIMの特色も含め、自分の状況に適したサービスを活用することが肝要です。
通信手段 | メリット | デメリット |
---|---|---|
現地SIM | ・価格は最安 ・通信状況は安定 | ・現地での契約なので難易度高め ・事前に準備できない ・稀にぼったくられる |
海外Wi-Fiレンタル | ・事前に準備ができる ・サービスの選択肢が多い ・複数人でシェアしやすい ・スマホの電池を温存できる | ・荷物が増える ・現物の受取、返却が必要 ・充電が必要な機器が増える |
日本のキャリアサービス | ・事前準備がほぼ不要 ・荷物が増えない ・サポートが手厚い | ・使用可能期間や容量の上限がある ・容量追加など価格が高い場合がある |
まとめ
ということで、お手軽eSIMサービスの紹介でした。
通信状況を整えておけば、現地でスムーズな行動を取ったり、待ち時間に暇を潰せたり、ストレスフリーな海外出張に繋げることができます。
個人的には、一つの手段にこだわる必要はないと思うので、良さげなサービスや通信手段をあれこれ試して自分なりの最適解が発見できたらいいと思います。
以上、最後までありがとうございます。