先日、設立したまま放置していた会社を廃業する手続きを行なってきたので一連の流れをまとめました。
一度も活動をしていない売上ゼロの赤字会社だったので、一人で手続きを進めたいとネットであれこれ調べたのですが、廃業(解散・清算)の手続きの詳細がほとんどなかったことが理由です。
前提条件として、廃業した会社の状況は以下の通りです。
- 株式会社
- 設立後の活動はゼロ
- したがって、売上ゼロ
- 買掛など債務ゼロ
- 本人以外の従業員はゼロ
なんでこの会社作ったん?と疑問に感じる人もいるかもしれませんね、、、
ちゃんと当初は目的があったのですが、計画が頓挫した結果、実働ゼロのまま廃業することとなりました、、、
ちゃっちゃと廃業のやり方、流れが知りたいんじゃという人は、こちらからどうぞ!!
2023年9月現在の情報をもとに書いています。情報の取り扱いには細心の注意を払っていますが、誤りがあり訂正や削除の必要がある場合は調査の上、速やかに対応します。問い合わせ先は下記です。
なにゆえ会社を解散・清算したのか
冒頭にも書いた通り当初の計画が頓挫した結果、この会社を存続させる意味がなくなったからです。
会社設立時に30万円近いお金が掛かっているので別の機会に活用できないかとも考えたのですが、会社は維持するだけでもお金がかかるので解散・清算することを決めました。
活動していない会社の選択肢
選択肢としては、次の3つがありました。
- 何もせず会社を維持する
- 会社を休眠させる
- 会社を解散・清算する ← 今回行ったのはこれ
活動していない会社の場合、「休眠させる」という選択肢があります。
しかし、私の場合は「何もせず維持」と「休眠させる」に大きな違いはなく毎年の手続きやコストに差がなかったことも「解散・清算する」の決め手になりました。
簡単な違いについては下表の通り。(表は横にスクロールできます。)
項目 | 何もせず維持 | 休眠 | 解散・清算 |
---|---|---|---|
各手続きの費用 | 何もしないので無し | 無料 | 41,000円 |
毎年の決算申告 | ある | ある | 解散・清算時に発生 以後は無し |
法人税 | 法人住民税均等割 70,000円 | 法人住民税均等割 70,000円 (自治体による) | 解散・清算時に発生 以後は無し |
その他変更届などの手続き | 都度必要 | 都度必要 | 無くなる |
「何もせず維持」する場合は普通に法人が存在しているので、通常通り法人に関わる手続きは全て必要です。
「休眠」する場合も法人自体は存在しているので、毎年の決算申告や変更の届出などが必要です。
上記2つの違いがあるとすれば税金部分なのですが、「何もせず維持」した場合でも、会社が事業活動をしていなければ売上ゼロなので法人住民税均等割70,000円のみです。
他方、「休眠」状態での均等割は自治体によって「ゼロとしてくれる場合」と「通常通り70,000円の場合」とがあり、自治体に確認したところ私の場合は通常通りでした。
会社を休眠させたとしても、毎年の決算申告や均等割の70,000円が必要であれば、数年以内に事業活動を行わない限りは手間と維持費が高くなるのは明らかです。
よって、今回は会社を解散・清算することにしました。
会社を解散・清算する流れ
解散・清算の流れを説明する前に、再度解散させた会社の状況をまとめます。
- 株式会社
- 設立後の活動はゼロ
- したがって、売上ゼロ
- 買掛など債務ゼロ
- 本人以外の従業員はゼロ
上記の状況で会社を解散・清算するまでの流れはざっくり下記の通りです。
- 解散決議の株主総会
- 官報公告、債権者への通知
- 法務局へ解散、清算人の登記申請
- 税務署などへの解散届
- 解散日までの決算申告
- 法務局へ清算結了の登記申請
- 解散日から清算結了までの決算申告
- 税務署などへの清算結了届
解散決議の株主総会
一人会社であればほとんどの場合は株主も自分一人でやっていると思います。
ちゃっちゃと株主総会の議事録を作成します。
法務局の1-16 株式会社解散及び清算人選任登記申請書(清算人が1人の場合)からファイルをダウンロードすると議事録の書式と一緒に解散と清算人選任登記の書式も手に入るので便利です。
この時、「印鑑届書」も一緒にダウンロードしておきます。
官報公告
解散登記後に債権者を守る義務があり、官報公告を通じて会社を解散させる旨を2ヶ月以上通知する必要があります。
官報公告の費用は1行当たり3,589円(税込・2023年9月現在)、一般的には10行前後になるそうなので35,000円〜40,000円くらい掛かります。
ただし、今回の様に活動ゼロで債権者がいない一人会社では官報公告を行っていない人が多いのが実態です。
官報公告をしなくても、その後の手続きは完了できること、実害が発生しないことなどが理由で厳しくチェックはされていないようです。
法務局へ解散、清算人の登記申請
下記の必要書類を準備して管轄の法務局に提出します。(オンライン申請ができますが、私は直接提出しました。)
- 株式会社解散及び清算人選任登記申請書
- 清算人の就任承諾書
- 印鑑届書
- 自分の印鑑証明(印鑑届書の添付書類として必要)
- 株主総会議事録と株主リスト
- 定款
登記に必要な費用は合計39,000円です。
- 解散登記:30,000円
- 清算人登記:9,000円
法務局の印紙売場で印紙を39,000円分購入します。
必要書類の提出と支払いが完了すると、おおむね1週間ほどで登記が完了し履歴事項全部証明書に「解散」の項目が記載されます。
「自分の印鑑証明」以外の必要書類は、1-16 株式会社解散及び清算人選任登記申請書(清算人が1人の場合)から全てダウンロードできます。
上記リンクでは記載例(PDF)が確認できるので記載例にならって書いていきます。
登記申請書の細かい書き方
登記申請書全体の記載例は上記の通りです。
「登記すべき事項」について、登記申請書の記載例では「別紙のとおり」となっています。
ここは、下記のように書けば別紙は不要です。(私は気付かずコピペした結果、法務局から別紙が必要と連絡がありました。後日追加で提出したので清算結了までの時間が延びました、、、)
- 登記すべき事項 「解散」
- 令和○年○月○日株主総会の決議により解散
- 「役員に関する事項」
- 「資格」清算人及び代表清算人
- 「住所」自分の住所
- 「氏名」自分の名前
「登記申請書」と「収入印紙貼付台紙」をホチキスでまとめた後に契印をして完成です。
清算人の就任承諾書の細かい書き方
清算人の「就任承諾書」は上記リンクからダウンロードした書類の通りに記載すれば問題ないです。
書式をワードでダウンロードすると6ページ目にあります。同じページに「委任状」の記載例がありますが、他の人に申請を頼まないのであれば削除して大丈夫です。
就任承諾書の日付は株主総会の日付と同じです。
印鑑届書の細かい書き方
「印鑑届書」の書き方は上記の通りです。
税務署などへ解散の異動届提出
解散登記完了後に「解散」が記載された履歴事項全部証明書を必要枚数取得し、下表の提出先に必要書類と共に提出します。
今回は一人会社を前提としているので下表の提出先ですが、従業員がいる会社だと労働基準監督署やハローワークにも提出する書類があります。
横にスクロールできます。
提出先 | 提出書類 |
---|---|
税務署 | ・解散の異動届出書 ・給与支払事務所等廃止届 ・「解散」が記載された履歴事項全部証明書 |
都道府県税事務所 | ・解散の異動届出書 ・「解散」が記載された履歴事項全部証明書 |
市区町村の役所 | ・解散の異動届出書(東京23区内に会社がある場合は不要) ・「解散」が記載された履歴事項全部証明書 |
年金事務所 | ・適用事業所全喪届 ・「解散」が記載された履歴事項全部証明書 |
解散異動届出書の細かい書き方
税務署、都道府県税事務所、市区町村に提出する異動届出書の書式は同じものです。各官公庁で入手できる手書きの異動届出書も4枚綴りになっていて一度で全て書けるようになっています。
ネットでExcel版やPDF版を入手できるのでさくっと作成します。
適用事業所全喪届の細かい書き方
日本年金機構の適用事業所が廃止、休止等により適用事業所に該当しなくなったとき、に書式と記入例があります。書式をダウンロードして下記リンクを参考に作成します。
解散日までの決算申告
解散日を最終日とした決算申告書を作成します。先ほどの「解散の異動届出書」と一緒に提出できるので、なるべく同時に作成しておきます。
必要書類や書き方は通常の決算申告と全く同じです。事業活動を何もしていなければ納税は法人住民税均等割のみです。
参考までに私が提出した書類(2023年提出、管轄は東京23区内)は以下になります。管轄税務署に事前予約をして確認してもらってから提出しました。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本変動計算書
- 個別注記
- 別表一
- 別表一の二次葉
- 別表二
- 別表四
- 別表五(一)
- 別表五(二)
- 別表十五
- 法人事業概況説明書
- 第六号様式
- 第六号様式別表四の三
法務局へ清算結了の登記申請
清算結了登記は解散日から2ヶ月以上経過していないと申請できません。債権者を保護する為の措置です。
清算結了登記が完了すると、いよいよ本当に会社が消滅します。
必要書類は下記の通りで、書式は解散登記と同様に法務局の1-17 株式会社清算結了登記申請書【R4.10.5更新】から入手できます。
- 株式会社清算結了登記申請書
- 株主総会議事録と株主リスト
- 決算報告書
費用は2,000円です。
おおよそ1週間ほどで登記が完了します。
清算結了登記申請書の細かい書き方
内容はほとんど「解散登記申請書」と同じですが、「解散」に関する内容だったものを「清算」に関する内容に変更します。
登記の事由:清算結了
登記すべき事項:令和○年○月○日清算結了
登録免許税:金2,000円
「登記申請書」と「収入印紙貼付台紙」をホチキスでまとめた後に契印をして完成です。
決算報告書の書き方
清算結了の申請をする時に「決算報告書」なるものも法務局に提出します。
後述する清算結了までの決算申告内容を基に、解散日から清算結了までの間の「収入」「費用」、それらを加味した最後に残った「残余財産の額」を記載します。
残余財産を設立時に発行した株数で割り、一株あたりの金額を算出した金額を記載します。
その後、株主に対して財産を分配していきますが、設立から活動ゼロの一人会社であれば出資した金額以上の財産はないですし、株主は一人なので、ややこしいことはほとんどありません。
残ったお金を自分に戻して完了です。
解散日から清算結了までの決算申告
解散日の翌日から清算結了までの決算報告書を作成します。
必要書類は「解散日までの決算申告」と全く同じです。事業活動が何もなければ収入はゼロなはずなので、清算結了に必要な経費と法人住民税の均等割を計算していきます。
清算結了は解散日から2ヶ月以上経過しないと申請できません。この2ヶ月の間でも法人住民税が発生します。(自治体によっては無しにしてくれるところもあるらしいですが、真偽のほどは分かりません。)
都道府県税事務所で色々教えてくれるので確認した方がいいです。
参考までに私が提出した書類(2023年提出、管轄は東京23区内)は以下になります。管轄税務署に事前予約をして確認してもらってから提出しました。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本変動計算書
- 個別注記
- 別表一
- 別表一の二次葉
- 別表二
- 別表四
- 別表五(一)
- 別表五(二)
- 別表十五
- 法人事業概況説明書
- 第六号様式
- 第六号様式別表四の三
税務署などへ清算結了の異動届提出
「解散」の移動届出書と同じ書式です。「解散」を「清算結了」にして日付を変更するだけでOKです。
清算結了の登記が完了すると「閉鎖事項全部証明書」が取得できます。必要枚数を取得し、下表の提出先に届出書と一緒に提出します。
横にスクロールできます。
提出先 | 提出書類 |
---|---|
税務署 | ・清算結了の異動届出書 ・閉鎖事項全部証明書 |
都道府県税事務所 | ・清算結了の異動届出書 ・閉鎖事項全部証明書 |
市区町村の役所 | ・清算結了の異動届出書 ・閉鎖事項全部証明書 |
清算結了異動届出書の細かい書き方
解散・清算の分からないことは官公庁に確認
今回、私が会社の解散・清算の手続きを進めるにあたって、管轄の法務局や税務署に色々と相談しました。
流石にアポ無しで窓口に行っても細かい話はできませんが、事前予約をすれば結構細かい相談でも対応してもらえます。
現在、私が経営している会社も初めの3期は自分で決算申告を行いましたが、この時も税務署に相談にいって無事に完了しています。
利益が無い、または少ない時は、あれこれ節税を考えて外注するよりも自力で申告や申請を行った方が節約になったりします。
まずは管轄の法務局や税務署に相談に行ってみましょう。
まとめ
登記申請や決算申告を外注に出すと、それなりの費用が掛かります。(実際に自分でやってみると費用が掛かることに納得できますが)
事業活動をしている会社であれば必要経費と割り切れますが、何も利益を生み出していない会社ならできればコストを掛けたくないのが正直なとこです。
今回の私の様に取引が全くない会社であれば金銭的に迷惑を掛けたり、未払いの税金でトラブルになったりするリスクも少ないと思います。
思い切って自分で諸々の申請をしてみても悪くはないんじゃないでしょうか。
以上、最後までありがとうございます。